基本文型と動詞
みなさんは、すでに英語文の骨格_基本文型_をすべて学びました。英語文の設計図は出そろったということです。
「主+動+目(他動型)」「主+動(自動型)」「主+動+説明語句(説明型)」「主+動+目+目(授与型)」
ここで1つ、重要な話をしましょう。それは、動詞と基本文型の相性についてです。動詞には、それぞれ得意とする文型があります(1つとは限りません)。基本文型のもつ独自の意味と、動詞のもつ意味がマッチするとき、初めて意味の通る文ができるということです。例えば、次の文は明らかに不自然。
- John died Mary a present.(×)
die(死ぬ)は、単なる動作です。自動型(John died.)はOKでも、授与型を使って「与える」ことはできませんよね。
- I thought her.(×)
think は単なる動作。心にアイデアを思い浮かべる動作です。何もほかに力を及ぼす動作ではないので他動型とならず、think about / of her と自動型となります。
動詞と文型の相性は、英語を使いながら徐々に習得すべき事柄ですが、ここでいくつか重要なヒントを差し上げておきましょう。
■同じ動詞で複数の型
①自動型・他動型共用
多くの動詞は他動型にも自動型にも使うことができます。
(自)The chair moved.(椅子が動いた)
(他)I moved the chair.(私は椅子を動かした)
②rise_raise と lay_lie に注意
rise(上がる)_raise(上げる)と、lay(横たえる)_lie(横たわる)に注意しておきましょう。同じ意味でありながら他動型_自動型で異なった動詞を使います。
(自) The sun rises in the east.(太陽は東から昇る)
(他)He raised his hand.(彼は手を上げた)
(自)I like to lie on the beach.(ビーチに寝ころぶのがすき)
(他)He laid his hand on my shoulder.(彼は私の肩に手を乗せた)
lay と lie はどちらも不規則動詞。lay _ lay _ laid, lie _ lay _ lain となります。lay の原形と lie の過去形が同じ形になり、まぎらわしいので注意しましょう。
③連想によって広がる意味
move(動く・動かす), open(拓く・開ける)_同じ動詞を自動型・他動型で使う、こうした使い分けは難しくありませんよね?ですが、ネイティブの表現力を得るためには、もう一歩進んでもらう必要があります。「連想によって使い方を広げる」_それがネイティブの能力。
- She walks every day.(自)
- I walk my dog every day.(他)
walk は「歩く」。単なる動作ですから、基本は自動型です。他動型で使われたときには「(犬などを)散歩させる」_「歩く」を対象に力を及ぼす意味で使うことから、この意味が生まれます。単純な連想が働いていることがわかりますね。
- He run fast.(自)
- He run a restaurant.(他)
run(走る)から「動かす・運営する・経営する」へ。「レストランを走らせる」からの連想です。ここまで理解すれば、もうみなさんには_例えば_なぜ sit(座る), stand(立ち上がる)に「(慎重に)置く」「耐える」という使い方があるのかが理解できるはず。「座らせる」「支えて立っている」という他動型(力が及ぶ)に則した連想が働くからですよ。
- He sat the glass on the table.
- I can't stand his attitude.
最後に1つ変わった連想をご紹介しましょう。
- I went there.(自動型)
- Everything went rotten.(説明型)
すでに述べたように、go は説明型に使うことができます。「行く(ある場所から去る)」から「~になる(別の状態へ変化)」へ意味が広がっているのです。こうした例は数多くあり、一挙に学習することはできません。ネイティブの使い方を観察し、文型の意味を考えながら「こうやって使えるんだな」と1つ1つ自分のものにしてください。
■訳は同じでも型が違う動詞
動詞と文型の相性の話を続けましょう。実は日本語訳からでは使う型がわからないケースがあるのです。
look と see について考えてみましょう。どちらも「見る」ですが、使われる型が異なります。
- I looked at the dog.
- I saw the dog.
look には前置詞が付いていることに注意しましょう。これは自動型。see は他動型となっています。それは意味(イメージ)が異なるから。
look は単なる動作。「ん?」と「目を向ける」という動きをあらわした動詞です。だからこそ、どこに向かって目を向けるのかを意味する前置詞 at が加わります。一方 see は「見える」。視覚が対象をとらえている_力が及んでいる_ことをあらわす動詞。だから他動型となるわけです。
「到着する」と訳される arrive と reach も同じです。 arrive は自動型、reach は他動型です。
動詞と文型をマスターするうえで、日本語訳は万能ではありません。そのニュアンスまでしっかりととらえる必要があるのです。
■型を間違えやすい動詞
次の文は、どちらが自然だと思いますか?
- We discussed / discussed about the matter.
discuss には思わず about(~について)を付けてしまいそうになりますが、正解はdiscussed。この動詞は他動型で使われます。discuss の日本語訳は「話し合う・議論する」ですが、この動詞のイメージは「ターゲットになる話題にアタックする」。attack(攻撃する)と同じ感触なので他動型_直接目的語をとるのです。
次の動詞はすべて他動型で使われます。前置詞を付けないように注意しておきましょう。
- Don't mention it.
- I asked him.
- I married Catherine.
- I told him.
- I entered the room.
- I visited London.
- She approached me.
- My son resembles me.
どの動詞にも、その行為が対象に直接及ぶことが意識されています。
逆のケースもあります。次の動詞は自動型。直接目的語をとらず前置詞を必要とします。相手に力を及ぼさない単なる動作として意識されているからです。
- I complained to him.
- I apologized to him.
- I agreed with him.
「ぶつぶつぶつ」「ごめんと言ったり頭を下げる」「うんとうなずく」_すべて単なる動作。だからこそ、動作が対象に向かう場合には前置詞が必要となるのです。
ある動作がどの文型で使うことができるのか。あまり神経質になる必要はありません。会話は人間同士のコミュニケーション。よほどのことがない限り相手はわかってくれます。気軽に考えて、ゆっくり学んでいってくださいね。
では、基本文型と動詞はここまで。
See you again.